私の無慈悲でない神様

なんとなく生きられればそれでもいい

交際5周年を迎えたその日、仕事のクビが決まった

 

それは2月10日頃の話で、直属の上司から「お疲れ。今週でどこか時間取れる日程ある?」と突然ミーティングの時間を取ってほしいと連絡があった。

その時点で正直言って、いい予感はしていなかった。

新型コロナウイルスの流行により、会社の業績がガタ落ちしていたのだ。業務よりも待機している時間が増えたのは2020年の5月を過ぎたころで、むしろ今までよく働けていたなくらいの気持ちだった。

頭ではそう理解しつつも気分は断頭台を目の前にしているようで、連絡があったその日からミーティングの日まで気が気ではなかった。よりにもよって、ミーティングの日程は彼氏との交際5年目の記念日だった。

 

5年目記念日のその日、上司と他数人の同僚がZOOM画面に表示され、開口一番上司の口から出てきたのは「知っての通りだとは思うけど、業績が落ちています」だった。この時点ですべてを察した。要するに、私とほか数名の同僚はクビが決まったとのことだった。

予想通り過ぎて私は半笑いになりつつ意識が遠のきそうだった。わかっていてもキツいもんはキツい。

 

「ああはい、わかりました」

「退職日はいつに設定したらよいでしょう?」

 

同僚たちの声が聞こえる中、私は沈黙するほかなかった。

この不景気でクビか~と思うとうまく言葉が出なかったのである。

 

無慈悲なZOOM面談を終え、ほかのクビが決まった社員たちとチャットで軽く言葉を交わす。そして私は仕事中の彼氏に「仕事クビになっちゃった!」とつとめて明るくLINEを飛ばした。

 

仕事を終えた彼氏から電話があった。要するに就職してから精一杯走り抜けたのだから、しばらくはゆっくりするといい。とのことだった。

より悲劇的な結末を求めるのであれば、5周年記念日という節目の日に彼氏からもフラれるくらいがちょうどいいのだろうが*1私の神様はそこまで無慈悲ではなく、狂ってもいなかった。私が私を神の視点から見ていたのであれば、これ以上追い詰められたらどうなるのだろ~という気さくな気持ちできっと彼氏とも別れさせていたと思う。

当時はそれくらいの気持ちだった。

 

「仕事を辞めて、モンハンばかりしていた」という記述をインターネットの海で何度か見たことがある。仕事を辞めても別にモンハンばかりはしないだろう、と当時の私は思っていたのだが、どうも人は発売時期と仕事を辞めた時期が重複すると本当にモンハンばかりすることになるらしい。

退職日が近づいてきた折にモンスターハンターライズが発売されて、気乗りはしなかったものの離れて暮らす妹がプレイしているというので購入したところ恐ろしい勢いでHR*2が上がって行ってしまった。そのせいで家族にも無職がバレた。無職がバレたとなっては仕方ないのでどんどんモンハンに精を出した。どんどんHRが上がって行った。瑠璃原珠*3だけがぜんぜん出なかった。

 

 

ある日モンハンをしていてふと、いくら労働が嫌いだからと言ってもクビになるとヘコむんだな、と思った。そしてモンハンをしている間だけその何とも言えない脱力感から救われるのだ。

 

逆にTwitterとかで「退勤した!」というツイートを見ると「いいよな、退勤できる職場があって…」と思ってしまうのでダメだ。もう退勤できないので*4退勤した!と言うと嘘になっちゃうからである。

 

 

そんなに無慈悲でない私の神に感謝しつつ、ハンター業に精を出す日々を続けている。

 

 

 

 

 

 

*1:まったくそんなことはない

*2:レベルみたいなもの

*3:モンスターと戦うと貰えるレアな素材

*4:就職すればそんなことはない